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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
その姿が、その後ほぼ半年もの間、伊藤と一緒に寝ている僕の足もとの壁に、ちょうどその時刻にはっきりと現れて来るのだ。毎晩ではない、が時々、夜ふと目がさめる。すると、その目は同時にもう前の壁の方に釘づけにされていて、そこには彼女のその姿が立っているのだ。一と晩の間にこんなにもやつれたかと思われる、その死人のように蒼ざめた顔色の上に、ふだんでも際だって見える顔の筋が、ことさらにひどく際だって見えた。そして、びっくりしたように見ひらいたその目には、恐怖と、憐れみを乞う心とが、一ぱいに充ちていた。
「許して下さい。」
彼女は振り返って、僕が半分からだを起しているのを見て、泣き出しそうに叫びながら逃げ出した。
「待て。」
と、その前に僕は彼女を呼んだのだ。そして立ちあがって彼女を押えようとしたのだ。
が、そんな前後のことはいっさい断ち切られて、ただ彼女が振り返って見たその瞬間の彼女の姿だけが現れて来るのだ。
僕は、それが夢か現なのかよく分らないことが、よくあった。が、確かにそれが夢でないと思われたことも幾度もあった。そして、そのいずれの場合にも、僕が自分に気のついた時には、おびえたように慄えあがって、一緒に寝ている伊藤にしっかりとしがみついているのだった。