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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
が、それもまたほんの一時のことで、僕はまたさらに本当の自分に帰って、手を伸して枕もとの時計を見た。時計はいつもきまって三時だった。
「また出たの?」
「うん。」
と、伊藤はそれを知っていることもあった。が、ぶるぶる慄えたからだにしがみつかれながら、何にも知らずに眠っていることもあった。そして、よしそれを知っていても、僕のおびえが彼女にまでも移ることは決してなかった。彼女はいつも、
「ほんとにあなたは馬鹿ね。」
と、笑って、大きなからだの僕の頭を子供のように撫でていた。
実際僕は、このお化の時ばかりではない、何か恐い夢を見ると、きっと同じようにおびえるのだった。そしてその慄えが、どうかすると、目をさましてからもまだしばらくの間続くことがあった。
「ほんとにあなたは馬鹿ね。」
と、そんな時にもよく、僕は彼女に笑われた。僕はきっと心(しん)は非常に臆病者なのだ。それとも、僕の心の中には、無知な野蛮人の恐怖が、まだ多分に残っているのだ。
が、そんなにして、話を野蛮人のところまで引きもどす必要はない。僕は今ここで、僕が女の怨霊を見るに至った僕の心理の、科学的説明を試みようとしているのではないのだから。