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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
したがってその二人とほんとうに親しむことはできなかった。僕はその山形の中にも多分の野獣性が潜んでいるのを見ていた。しかしその町人らしいレファインさは堪らなくいやだった。彼は多くはその弟を相手に遊んでいた。僕は大がい横井の「黄疸」をいじめて暮していた。栄養不良らしいその黄色な顔から、僕等は彼をそう呼んでいたのだ。横井はその妹の、やはり痩せた黄色い顔をしたのと、さびしそうに遊んでいた。
お互いの母同士の間にも親しい交際はまるでなかった。
その山形の家からお化が出た。
夜なかに、台所で、マッチを磨る音がする。竈の火の燃える音がする。まな板の上で何かを切る音がする。足音がする。戸棚を開ける音がする。茶碗の音がする。話し声がする。そうした騒ぎが一時間も続くのだ。
ある晩、山形の「伯母さん」というのが、便所へ行った帰りに、手を洗おうと思って雨戸を開けた。まんまるい大きい月が庭の松の木の間に引っ懸っているように見えた。庭はその月あかりで昼のように明るかった。伯母さんは手洗鉢の方へ手をやった。鉢の中の水にもまんまるい月が映っていた。が、その水を汲もうとすると、急にバラバラと大粒の雨が降って来た。