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わかきひのせっつのかみ
若き日の摂津守
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《若き日の摂津守(わかきひのせっつのかみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 頁
――猟場は老松川の落ち口の近くであるが、そこへゆく途中、湖岸の道の脇に小さな小屋が四五十、ぎっしりと並んでいるのを、光辰は馬の上から認めた。それらは藁と割り竹で編んだ囲いに、板で屋根を掛けただけの、乞食小屋そのままというひどいもので、朝靄の中にただよっている炊ぎの煙がなければ、とうてい人が住んでいるとは思えないけしきであった。
「あれは」光辰は馬を停め、鞭でその小屋の群をさし示しながら訊いた、「あの小屋はなんだ」
光辰のすぐうしろに永井民部がいた。
「存じません」と民部は馬を停めながら答えた、「みてまいりましょうか」
「重太夫が叱るだろう」と光辰は馬を進めながら云った、「あとでいい」
猟場には新しく仮屋が建ててあった。湖に面したその建物は二重で、光辰の席は一段高く、桟敷造りになっており、その下が重臣たちの席、また二重の下桟敷が、目見以上の者の席になっていた。
光辰の席には、老女の菊岡と五人の侍女に囲まれて、盛装のおたきが控えていて、浅利重太夫が光辰に披露し、おたきは定めの席へ進んだ。光辰はちょっと彼女を見たが、まったく関心がないようすで、すぐに眼をそらした。