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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

線上閱讀佐々木 邦《苦心の学友(くしんのがくゆう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 頁

青空文庫

「承知いたしました。これはちょっとおもしろいです」

「今晩は旧暦によりますと、霜月の十六日。夜の十時には月高くお裏山の公孫樹にかかって、老梟寒飢に鳴く。一陣の疾風雑木林を渡って、颯々の声あり」

と安斉先生はまた暗唱を始めた。

「先生もおはいりでございますか?」

「はあ。黒須有本矢島の面々も馳せ参じます」

「月がないといいですな」

「いや、今晩は特別物騒でございますよ」

「なぜですか?」

「若様は昔のお下屋敷時代に狐狸の出たお話をご存じありませんか?」

「それは富田さんから承りました」

「狐狸の類は月明を喜びます。今夜あたりは大入道が出るかもしれません」

「先生、おどかしっこはなしにいたしましょう」

「おこわいですか?」

「そんなことはありませんけれども」

「それではご参詣くださいますね?」

「むろん」

「おえらいですな。照彦様、あなたはいかがでございますか?」

「大入道の一人や二人、とりひしいでごらんにいれますよ」

と照常様は力んで見せた。

「おえらいおえらい。照常様は?」

「内藤君、きみはどうする?」

と照彦様は正三君の手を引っぱった。

「さあ。僕は柔道を知りませんから」

と内藤君は首をかしげた。