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たけをたずねる
茸をたずねる
飯田 蛇笏
線上閱讀飯田 蛇笏《茸をたずねる(たけをたずねる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,193 字 · 15 頁
近寄って来て先ず得物のあったことを讚歎し、自分も落葉に腰をおろして私にも休憩を勧める。
粂吉は、虚空の日を仰いでは時の頃を察するを常とする。それがまた不思議にもよく正確な時刻に合うので、彼が昼飯にしたいと言うときは、私も同意して握飯を取り出して昼飯を済まそうとする。先ず二つに割って食べようとする握飯へ蟻が落ちて来たりすることがある。ふり仰いで見ると、背後の山鼻から生えた老松の枝がさし出して直ぐ頭の上まで来ていることに気がつく。秋の日に照らされて心持ちなまなましい気を失った水筒の水が、握飯を食い終えた喉を下ってゆく。昼飯を終えた眼に静かに見渡すあたりは、ひとしきり風も無く、寂として日影が色濃くすべてのものに沁み入っている。
粂吉は立ち上ってつかつかと岩鼻へ出かけて行く。其処の岩鼻は直下数百尋の渓谷を瞰下する断崖の頂きで岩は一面に微細な青苔に蔽われている。彼は青苔に草鞋をしっかと着け、軽々しく小便を洩らすことなどがある。秋日に散らばり、渓谷へ霧の如く落ち散る小便の色彩は実に美しいものであった。
午過ぎの歩行は午前中に比してひどく疲労を感ぜしめられる。