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くさめいきゅう

草迷宮

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《草迷宮(くさめいきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,733 字 · 142 頁

青空文庫

」と、ぐいと圧えてまた蹈張り、

「野郎、入ってみやがれ、野郎、活仏さまが附いてござるだ。」

「仏ではなお打棄っては措かれない、人の声じゃ、お爺さん、明けて見よう、誰か苦んでいるようだよ。」

「これ、静かにさっせえ、術だ、術だてね。ものその術で、背負引き出して、お前様天窓から塩よ。私は手足い引捩いで、月夜蟹で肉がねえ、と遣ろうとするだ。ほってもない、開けさっしゃるな。早く座敷へ行きますべい。」

「あれ、聞きなさい、助けてくれ……と云うではないか。」

「へ、疾いもんだ。人の気を引きくさる、坊様と知って慈悲で釣るだね、開けまいぞ。」

と云う時……判然聞えたが、しわがれた声であった。

「助けてくれ……」

「…………」

「…………」

「宰八よう、」――

と、葎がくれに虫の声。

手ぼう蟹ふるえ上って、

「ひゃあ、苦虫が呼ぶ。」

「何、虫が呼ぶ?」

「ええ、仁右衛門の声だ。南無阿弥陀仏、ソ、ソレ見さっせえ。宵に門前から遁帰った親仁めが、今時分何しにここへ来るもんだ。見ろ、畜生、さ、さすが畜生の浅間しさに、そこまでは心着かねえ。へい、人間様だぞ。おのれ、荒神様がついてござる、猿智慧だね、打棄っておかっせえまし。