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くさめいきゅう

草迷宮

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《草迷宮(くさめいきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,733 字 · 142 頁

青空文庫

眉太く、眼円に、鼻隆うして口の角なるが、頬肉豊に、あっぱれの人品なり。生びらの帷子に引手のごとき漆紋の着いたるに、白き襟をかさね、同一色の無地の袴、折目高に穿いたのが、襖一杯にぬっくと立った。ゆき短な右の手に、畳んだままの扇を取って、温顔に微笑を含み、動ぎ出でつ、ともなく客僧の前へのっしと坐ると、気に圧された僧は、ひしと茶斑の大牛に引敷かれたる心地がした。

はっと机に、突俯そうとする胸を支えて、

「誰だ。」

と言った。

「六十余州、罷通るものじゃ。」

「何と申す、何人……」

「到る処の悪左衛門、」

と扇子を構えて、

「唯今、秋谷に罷在る、すなわち秋谷悪左衛門と申す。」

「悪…………」

「悪は善悪の悪でござる。」

「おお、悪……魔、人間を呪うものか。」

「いや、人間をよけて通るものじゃ。清き光天にあり、夜鴉の羽うらも輝き、瀬の鮎の鱗も光る。隈なき月を見るにさえ、捨小舟の中にもせず、峰の堂の縁でもせぬ。夜半人跡の絶えたる処は、かえって茅屋の屋根ではないか。

しかるを、わざと人間どもが、迎え見て、損わるるは自業自得じゃ。」

四十一

「真日中に天下の往来を通る時も、人が来れば路を避ける。