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「くさのしんぺいししゅう」かいせつ

「草野心平詩集」解説

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《「草野心平詩集」解説(「くさのしんぺいししゅう」かいせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,303 字 · 11 頁

青空文庫

草野心平のことを、懇意な人々は心平さんと言う。親愛の気持ちをこめた呼称である。肉付き豊かな大きな顔に、ロイド眼鏡をかけ、口髭をたくわえ、そして蓬髪、とこう書けば、なんだか寄りつきにくい人のようにも見えるけれど、知人を認めるとすぐに、如何にも嬉しげな笑みを浮べ、なつかしげな眼色を漂わすところ、まさに心平さんなのである。その全体の風貌が、物事に拘泥せず、茫洋としている。

だが、その茫洋さのうちにも、おのずからに発露してくる一つの志向がある。道を歩いている時でも、居酒屋で酒杯を手にしている時でも、講演の壇上に立っている時でも、心平さんは、しばしば、いやたいてい、空の一角を凝視するか、地の一隅を睥睨する。そこに、心意の焦点が据えられているのだ。

このことを、単にロマンチックなものだと解してはいけない。内に、或は卑近に、思うことの深ければ深いほど、遠くに夢を追うことになるのだ。言い換えれば、身近かな情感と遙かな夢とが、表裏一体をなす。もとより、それのどちらが表とも裏ともつかない一体だ。そしてどこから突っついても、突っつかれたと感ずる時には、心平さんは徹夜してでも談論風発する。