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こうやのふゆ

荒野の冬

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《荒野の冬(こうやのふゆ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,098 字 · 9 頁

青空文庫

すべての景色が、人間の生きるには、あまりにきびし過ぎるようにみえた。

参謀本部の地図と見くらべながら行くと、荒蕪地が遠く続いている中に、点々と小さい部落の名が書いてある。見ると、越中部落だの、加賀部落だのという名がのっている。この地図の出来た時よりももっと以前に、こういう土地へ移り住んだ人たちが、この土地の激しい自然と戦い抜いて、今もなお居残っているのであろうかと、心探しに目をやってみたが、人間の住んでいるような形跡は見当らなかった。そういえば、地図の上には、何々牧場という名が沢山散らばっていたが、どれもそれらしいものは見えなかった。

長い距離を走って、汽車は名ばかりの停車場へ着く。すると貨車の入れ換えで、十分や二十分はゆっくり停車する。それでもやっと豊似には着いた。

豊似の手前で、あとで聞いてわかったことであるが、前年に入植したばかりの人たちの家が点々とあるのが見えた。家といっても、名ばかりの小屋で、何処で手に入れたか、焼けトタンらしい古鉄板と、木の板とでつぎはぎの屋根をふいてあった。それが妙に惨ましく見えた。それでもストーブの煙突らしいものはついていて、少しばかり煙が出ていた。