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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《荷風随筆集(上)(かつしかみやげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 頁

青空文庫

これは浅草の岸一帯が浅瀬になっていて上汐の流が幾分か緩であるからだ。しかし中洲の河沿いの二階からでも下を見下したなら大概の下り船は反対にこの度は左側なる深川本所の岸に近く動いて行く。それは大川口から真面に日本橋区の岸へと吹き付けて来る風を避けようがためで、されば水死人の屍が風と夕汐とに流れ寄るのはきまって中洲の方の岸である。

自分が水泳を習い覚えたのは神伝流の稽古場である。神伝流の稽古場は毎年本所御舟蔵の岸に近い浮洲の上に建てられる。浮洲には一面蘆が茂っていて汐の引いた時には雨の日なぞにも本所辺の貧い女たちが蜆を取りに出て来たものであるが今では石垣を築いた埋立地になってしまったので、浜町河岸には今以て昔のように毎年水練場が出来ながら、わが神伝流の小屋のみは他所に取払われ、浮洲に茂った蘆の葉は二度と見られぬものとなった。

一通遊泳術の免許を取ってしまった後は全く教師の監督を離れるので、朝早く自分たちは蘆のかげなる稽古場に衣服を脱ぎ捨て肌襦袢のような短い水着一枚になって大川筋をば汐の流に任して上流は向島下流は佃のあたりまで泳いで行き、疲れると石垣の上に這上って犬のように川端を歩き廻る。