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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《荷風随筆集(下)〔全2冊〕(しょうたく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,633 字 · 74 頁
先生は汚らしい桶の蓋を静に取って、下痢した人糞のような色を呈した海鼠の腸をば、杉箸の先ですくい上げると長く糸のようにつながって、なかなか切れないのを、気長に幾度となくすくっては落し、落してはまたすくい上げて、丁度好加減の長さになるのを待って、傍の小皿に移し、再び丁寧に蓋をした後、やや暫くの間は口をも付けずに唯恍惚として荒海の磯臭い薫りをのみかいでいた。先生は海鼠腸のこの匂といい色といいまたその汚しい桶といい、凡て何らの修飾をも調理をも出来得るかぎりの人為的技巧を加味せざる(少くとも表示せざる)天然野生の粗暴が陶器漆器などの食器に盛れている料理の真中に出しゃばって、茲に何ともいえない大胆な意外な不調和を見せている処に、いわゆる雅致と称る極めてパラドックサルな美感の満足を感じて止まなかったからである。由来この種の雅致は或一派の愛国主義者をして断言せしむれば、日本人独特固有の趣味とまで解釈されている位で、室内装飾の一例を以てしても、床柱には必ず皮のついたままの天然木を用いたり花を活けるに切り放した青竹の筒を以てするなどは、なるほど Rococo 式にも Empire 式にもないようである。