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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《荷風随筆集(下)〔全2冊〕(しょうたく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,633 字 · 74 頁
玄関から縁側まで古本が高く積んであったのと、床の間に高さ二尺ばかりの孔子の坐像と、また外に二つばかり同じような木像が置かれてあった事を、わたくしは今でも忘れずにおぼえている。
わたくしは裳川先生が講詩の席で、始めて亡友井上唖々君を知ったのである。
その頃作った漢詩や俳句の稿本は、昭和四年の秋感ずるところがあって、成人の後作ったいろいろの原稿と共に、わたくしは悉くこれを永代橋の上から水に投じたので、今記憶に残っているものは一つもない。
わたくしは或雑誌の記者から、わたくしの少年時代の事を問われたことがあったので、後にその事を思出してこの記を書いて見たのである。しかし過去を語るのは、覚めた後前夜の夢を尋ねて、これを人に向って説くのと同じである。
鴎外先生が『私が十四、五歳の時』という文に、「過去の生活は食ってしまった飯のようなものである。飯が消化せられて生きた汁になって、それから先の生活の土台になるとおりに、過去の生活は現在の生活の本になっている。またこれから先の、未来の生活の本になるだろう。しかし生活しているものは、殊に体が丈夫で生活しているものは、誰も食ってしまった飯の事を考えている余裕はない。