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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《荷風随筆集(下)(くさもみじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,512 字 · 63 頁
むかし目に見馴れた橢円形の黄いろい真桑瓜は、今日ではいずこの水菓子屋にも殆ど見られないものとなった。黄いろい皮の面に薄緑の筋が六、七本ついているその形は、浮世絵師の描いた狂歌の摺物にその痕を留めるばかり。西瓜もそのころには暗碧の皮の黒びかりしたまん円なもののみで、西洋種の細長いものはあまり見かけなかった。
これは余談である。わたくしは折角西瓜を人から饋られて、何故こまったかを語るべきはずであったのだ。わたくしが口にすることを好まなければ、下女に与えてもよいはずである。然るにわたくしの家には、折々下女さえいない時がある。下女がいなければ、隣家へ饋ればよいという人があるかも知れぬが、下女さえさびしさに堪兼ねて逃去るような家では、近隣とは交際がない。啻にそれのみではない。わたくしは人の趣味と嗜性との如何を問わず濫に物を饋ることを心なきわざだと考えている。
○
わたくしはこれまでたびたび、どういうわけで妻帯をしないのかと問われた。わたくしは生涯独身でくらそうと決心したのでもなく、そうかといって、人を煩してまで配偶者を探す気にもならなかった。