輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あしはみていた
葦は見ていた
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《葦は見ていた(あしはみていた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 頁
それからまもなく、女はまた進みだした、川心に向って、――水は腰から胸のあたりまであがった。濃い霧の条が来て、いちど女の姿をすっかり隠した。次に見えたとき、女は殆んど首まで浸っていたが、そのとたんにふっとその首も水の中に沈んだ。そこに水の輪ができ、静かに輪がひろがった。
まもなくまた女の頭が見えた。沈んだ処から四五間川下で、ばしゃばしゃと水を叩き、はっはと短く喘いだ。そして、いちど沈んだかと思うと、もっと川下でもういちど頭が浮いた。それはかなり早い速度で川下のほうへと流されていたが、もう霧に遮られてよくは見えなかった。
「計さん」女の声がした、「計之介さん」
それは水を含んだ口から出る声であった。つづいて「かぼっ」という水音がし、もうなにも聞えなくなった。
空はますます明るくなり、風立って来た。風は川上のほうから静かに吹きはじめた。そちらから順々に葦が揺れて来るので、吹いて来る方向がわかった。すると、霧はにわかに巻きたって、条になり渦になり、川下のほうへと流れはじめた。川岸の夏草も、堤の灌木の茂みも、びっしょりと霧粒のために濡れた。
汀に置かれた草履も、あの文筥も濡れていた。