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うすこうばい
薄紅梅
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《薄紅梅(うすこうばい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,133 字 · 122 頁
白い髯を、あべこべに、炎天九十度の物干から、僧正坊が覗いたか、と驚いた、という話がある。
二
おなじ人が、金三円ばかりなり、我楽多文庫売上の暮近い集金の天保銭……世に当百ときこえた、小判形が集まったのを、引攫って、目ざす吉原、全盛の北の廓へ討入るのに、錣の数ではないけれども、十枚で八銭だから、員数およそ四百枚、袂、懐中、こいつは持てない。辻俥の蹴込へ、ドンと積んで、山塞の中坂を乗下ろし、三崎町の原を切って、水道橋から壱岐殿坂へ、ありゃありゃと、俥夫と矢声を合わせ、切通あたりになると、社中随一のハイカラで、鼻めがねを掛けている、中山高、洋服の小説家に、天保銭の翼が生えた、緡束を両手に、二筋振って、きおいで左右へ捌いた形は、空を飛んで翔けるがごとし。不忍池を左に、三枚橋、山下、入谷を一のしに、土手へ飛んだ。……当時の事の趣も、ほうけた鼓草のように、散って、残っている。
近頃の新聞の三面、連日に、偸盗、邪淫、殺傷の記事を読む方々に、こんな事は、話どころか、夢だとも思われまい。時世は移った。……
ところで、天保銭吉原の飛行より、時代はずっと新しい。