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うすこうばい
薄紅梅
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《薄紅梅(うすこうばい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 61,133 字 · 122 頁
三十三
辻町糸七は、ぽかんとしていた仕入もの、小机の傍の、火もない炉辺から、縁を飛んで――跣足で逃げた。
逃げた庭――庭などとは贅の言分。放題の荒地で、雑草は、やがて人だけに生茂った、上へ伸び、下を這って、芥穴を自然に躍った、怪しき精のごとき南瓜の種が、いつしか一面に生え拡がり、縦横無尽に蔓り乱れて、十三夜が近いというのに、今が黄色な花ざかり。花盛りで一つも実のない、ない実の、そのあって可い実の数ほど、大きな蝦蟇がのそのそと這いありく。
歌俳諧や絵につかう花野茅原とは品変って、自から野武士の殺気が籠るのであるから、蝶々も近づかない。赤蜻蛉もツイとそれて、尾花の上から視めている。……その薄さえ、垣根の隅に忍ぶばかり、南瓜の勢は逞しく、葉の一枚も、烏を組んで伏せそうである。
――遠くに居る家主が、かつて適切なる提案をした。曰く、これでは地味が荒れ果てる、無代で広い背戸を皆借そうから、胡瓜なり、茄子なり、そのかわり、実のない南瓜を刈取って雑草を抜けという。が、肥料なしに、前栽もの、実入はない。二十六、七の若いものに、畠いじりは第一無理だし、南瓜の蔓は焚附にもならぬ。