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とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《藤十郎の恋(とうじゅうろうのこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,078 字 · 25 頁

青空文庫

藤十郎は、生れながらの色好みじゃが、まだ人の女房と懇ろした覚えはござらぬわ。

若太夫 (座興のつもりでいったことを真っ向から、突き放され、興ざめ黙ってしまう)

千寿 (再び取りなすように)ほんに、坂田様のいわれる通りじゃ、この千寿とても、主ある女房と懇ろしたことはないわいな。

他の役者たち (皆一斉に笑う)……。

弥五七 それは誰とても同じことじゃ。女旱りがすれば格別、主ある女房にいい寄って、危い思いをするよりも宮川町の唄女、室町あたりの若後家、祇園あたりの花車、四条五条の町娘、役者の相手になる上臈たちは、星の数ほどあるわ。ははは。

源次 だがのう。一盗二妾三婢四妻というて、盗み食いする味は、また別じゃというほどに、人の女房とても捨てたものではない。

長十郎 さては、そなたには覚えがあるとみえる。

源次 何の覚えがあってよいものか。だがのう、磔が恐ければ、世に密夫の沙汰は絶えようものを、絶えぬ証拠は、今度の狂言に出るおさん茂右衛門じゃ。色事の道はまた別じゃ。はははは。

若太夫 (自分の悄気たことを、隠そうとして)座が淋しい。さあ……若衆たち、連舞なと舞わしゃんせ。