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とらのきば
虎の牙/透明怪人
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《虎の牙/透明怪人(とらのきば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 193,761 字 · 388 頁
こちらが動いても、向こうは動かないのです。
手をあげてみました。向こうは手をあげません。笑ってみました。向こうはムッツリしています。
「きさまは、だれだッ。」
ついにがまんがしきれなくなって、どなりました。すると、鏡の中の人物は、はじめて口を動かしました。笑ったのです。鏡の影が声をだして笑ったのです。
「アハハハハハハハ、だれだとは、こっちで言うことだよ。ぼくとおなじ顔をして、ぼくとおなじ服を着て、そして、ぼくのうちへ、むだんではいって来たやつはだれだッ。」
鏡ではなかったのです。そこには、ほんものの明智小五郎が立っていたのです。名探偵が横浜の怪屋で、こんどはぼくが大魔術をえんじてみせると言ったのは、このことだったのです。押入れの中に鏡があったわけではありません。二十面相は、自分とそっくりの人が、押入れの中に立っていたので、鏡とまちがえてしまったのです。
ほんとうの明智は、押入れの中から、つかつかと出てきました。明智がふたりになったのです。頭から足の先まで、すんぶんちがわない、ふたりの明智小五郎が、立ちはだかって、にらみあったのです。
ほんとうの明智が、右手をあげて、にせもののうしろを、指さしました。