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とらのきば
虎の牙/透明怪人
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《虎の牙/透明怪人(とらのきば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 193,761 字 · 388 頁
キャーッと悲鳴をあげたでしょうか。いや、悲鳴をあげることさえできなかったのです。ただもう、石になったように、からだがかたくなって、息もできないほどの、ふかいふかいおどろきでした。
怪紳士は化けものだったのです。いや、化けものよりも、もっとおそろしいやつだったのです。
ぬぎさったシャツの下に、何があったと思います? おそろしいものがあったのでしょうか。しかし、どれほどおそろしくても、何かがありさえすれば、こんなにもおどろきはしません。そこには、何もなかったのです。シャツの下は、からっぽだったのです。
怪物のろう人形のような顔は、ちゃんとあります。帽子もまだ、かぶったままです。ところが、顔の下には、首も、胸も、腹も、肩も、両手も、何もないのです。そして、腰から下は、ズボンをはいた二本の足がちゃんと、立っているのです。顔とズボンの間に、何もないことは、そこに、うしろのれんがが見えているので、わかります。からだがあれば、そのうしろのれんがのかべは、見えないはずです。
二少年は、自分たちのほうが、気がちがったのではないかと思いました。夢を見ているのではないかとうたがいました。