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きょこうのはる
虚構の春
線上閱讀太宰 治《虚構の春(きょこうのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 頁
で、誤魔化して置きます。御免なさい。さて、現在のぼくの生活ですが、会社は朝の九時半から六、七時頃迄です。ぼくの仕事は机上事務もありますが、本来は外交員です。自動車屋、会社の購買、商店等をまわり、一種の御用聞きをつとめるのです。大抵は鼻先で追い返されますし、ヘイヘイもみ手で行かねばならないので、意気地ない話ですが、イヤでたまりません。それだけならいいんですが、地方の出張所にいる連中、夫婦ものばかりですし、小姑根性というのか、蔭口、皮肉、殊に自分のお得意先をとられたくないようで、雑用ばかりさせるし、悪口ついでにうんとならべると、女の腐ったような、本社の御機嫌とりに忙しい、くびの心配ばかりしている。他人の月給をそねみ、生活を批評し、自分の不平、例えば出張旅費の計算で陰で悪口の云い合い、出張成金めとか、奥さんがかおを歪めて、何々さんは出張ばかりで、――うちなんか三日の出張で三十円ためてかえりましたよ。すると一方の奥さんは、うちは出張しても、まア、それだけ下の人達にするからよ。けれども主任さんは、二等旅費で三等にばかり乗るのですよ。けちねエ……。然し、奥さん出張すると、靴は痛む洋服は切れる、Yシャツは汚れる……随分煩さいのです。