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ぐびじんそう
虞美人草
線上閱讀夏目 漱石《虞美人草(ぐびじんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,559 字 · 401 頁
居住をそのままの母は、濃い眉を半分ほど入口に傾けて、
「おや御這入」と云う。
藤尾は無言で後を締める。母の向に火鉢を隔ててすらりと坐った時、鉄瓶はしきりに鳴る。
母は藤尾の顔を見る。藤尾は火鉢の横に二つ折に畳んである新聞を俯目に眺める。――鉄瓶は依然として鳴る。
口多き時に真少なし。鉄瓶の鳴るに任せて、いたずらに差し向う親と子に、椽は静かである。浅葱桜は夕暮を誘いつつある。春は逝きつつある。
藤尾はやがて顔を上げた。
「帰って来たのね」
親、子の眼は、はたと行き合った。真は一瞥に籠る。熱に堪えざる時は骨を露わす。
「ふん」
長煙管に煙草の殻を丁とはたく音がする。
「どうする気なんでしょう」
「どうする気か、彼人の料簡ばかりは御母さんにも分らないね」
雲井の煙は会釈なく、骨の高い鼻の穴から吹き出す。
「帰って来ても同じ事ですね」
「同じ事さ。生涯あれなんだよ」
御母さんの疳の筋は裏から表へ浮き上がって来た。
「家を襲ぐのがあんなに厭なんでしょうか」
「なあに、口だけさ。それだから悪いんだよ。あんな事を云って私達に当付けるつもりなんだから……本当に財産も何も入らないなら自分で何かしたら、善いじゃないか。