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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《虞美人草(ぐびじんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,559 字 · 401 頁

青空文庫

「どうだい、別嬪だろう」と宗近君は糸子に調戯かける。

俯目に卓布を眺めていた藤尾の眼は見えぬ、濃い眉だけはぴくりと動いた。糸子は気がつかぬ、宗近君は平気である、甲野さんは超然としている。

「うつくしい方ね」と糸子は藤尾を見る。藤尾は眼を上げない。

「ええ」と素気なく云い放つ。極めて低い声である。答を与うるに価せぬ事を聞かれた時に、――相手に合槌を打つ事を屑とせざる時に――女はこの法を用いる。女は肯定の辞に、否定の調子を寓する霊腕を有している。

「見たかい甲野さん、驚いたね」

「うん、ちと妙だね」と巻煙草の灰を皿の中にはたき落す。

「だから僕が云ったのだ」

「何と云ったのだい」

「何と云ったって、忘れたかい」と宗近君も下向になって燐寸を擦る。刹那に藤尾の眸は宗近君の額を射た。宗近君は知らない。啣えた巻煙草に火を移して顔を真向に起した時、稲妻はすでに消えていた。

「あら妙だわね。二人して……何を云っていらっしゃるの」と糸子が聞く。

「ハハハハ面白い事があるんだよ。糸公……」と云い掛けた時紅茶と西洋菓子が来る。

「いやあ亡国の菓子が来た」

「亡国の菓子とは何だい」と甲野さんは茶碗を引き寄せる。