輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しじみだに
蜆谷
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《蜆谷(しじみだに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,957 字 · 28 頁
四
そう云いながら振り返った娘は、そこにいるのがげん女でないのを知って息をひいた、「まあ、……まあ弥之さん」
「弥之助だよ、お八重ちゃん、帰って来た」
「あにさんは」八重はじりじりと後ろへ身をひきながら、恐怖にうたれた人のように声をふるわせた、「そして、あ、あにさんは」
「上へあがりな、いま炉の火をつくるから」
四
朝の光が煤けた障子を寒ざむと染めだした。それで炉の火の乏しさがいっそうきわだったようにみえる、弥之助は関ヶ原の話をしていた、又二郎がどんな風に討死したかということを。……もうお八重は泣いてはいなかった。げん女が息子の生きていることを信じたように、彼女は兄が死んだものとあきらめる習慣がついていたのだ。
母が釜戸へ立っていた、弥之助はお八重の衿足につよく眼をひかれた、二年のあいだにすっかり娘らしくなっている、そういう艱難な生活にいためられながら、若い命はいささかのためらいもなく、みずみずとその蕾をふくらめている、髪もつやつやとしてきた、うるみをおびた眼つき、鮮やかに赤く湿った唇、ちょっと手をふれても紅くなる豊かな頬、韻の深くなった声にまで、聞く者の心をそそるような一種の響きがあった。