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みかん

蜜柑

佐左木 俊郎

線上閱讀佐左木 俊郎《蜜柑(みかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,618 字 · 14 頁

青空文庫

「蜜柑が無がったがら、俺、飴玉買った。」

「咽喉渇いて仕様ねえがら、蜜柑買わせっさやったのに、飴玉など買って……ほして、その飴玉はやあ? 汝あ、一人で食ってしまったのがあ?」

お婆さんは、粥鍋の方へ行こうとする三毛の足を引っ張りながら、ぶつぶつとこぼした。

「一人で食ねえちゃ。貞ど菊さもやったちゃ。」

「この野郎は、ほうに、仕様のねえ野郎だ。」

その言葉の中には、幾分の愛情が籠められていた。

「ほだって、蜜柑が無えもの……」

善三は、一生懸命に竹を削りながら、ずるずるっと洟をすすりあげた。

「ほんじゃ、水持って来て呑ませろ。蜜柑買って来ねえ代わりに。」

「厭んだ。父に怒られっから厭んだ。」

「ほんとに、この野郎まで、なんとしたごったやなあ!……」

お婆さんの言葉には、悲壮、というような余韻があった。

「お美代姉はやあ? 善三。」

しばらくしてから、お婆さんは言った。

「今朝早ぐ、父と一緒に、大崎さ行ったは。」

「大崎さ? まだ行ったのが?」

お婆さんの顔には、悲哀の表情が浮かんだ。悲哀というよりも、むしろ悲壮といいたい表情、歯を喰いしばるようにして眼を閉じたのであった。