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こうじん
行人
線上閱讀夏目 漱石《行人(こうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 224,801 字 · 452 頁
「どうです、ちっと上って涼んでいらしったら」
「いいえ今日は急ぎますから、これで御免を蒙ります。御病人へどうぞよろしく。――でも結構でございましたね、早く御退院になれて。一時は宅でも大層心配致しまして、よく電話で御様子を伺ったとか申しておりましたが」
お兼さんはこんな愛想を云いながら、また例のクリーム色の洋傘を開いて帰って行った。
三十
自分は少し急き込んでいた。紙幣を握ったまま段々を馳け上るように三階まで来た。三沢は平生よりは落ちついていなかった。今火を点けたばかりの巻煙草をいきなり灰吹の中に放り込んで、ありがとうともいわずに、自分の手から金を受取った。自分は渡した金の高を注意して、「好いか」と聞いた。それでも彼はただうんと云っただけである。
彼はじっと「あの女」の室の方を見つめた。時間の具合で、見舞に来たものの草履は一足も廊下の端に脱ぎ棄ててなかった。平生から静過ぎる室の中は、ことに寂寞としていた。例の美くしい看護婦は相変らず角の柱に倚りかかって、産婆学の本か何か読んでいた。
「あの女は寝ているのかしら」
彼は「あの女」の室へ入るべき好機会を見出しながら、かえってその眠を妨げるのを恐れるように見えた。