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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《街はふるさと(まちはふるさと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 頁

青空文庫

手も足も動かなくなる。放置すれば、倒れる一瞬である。天水桶をみつけて、すがりつく。頭から、かぶっているのだ。又、歩きだす。知覚がもどり、彼は走りだしている。苦痛を超える、よろこび。坂がある。果して、駈けあがる力があるだろうか。疑いに負けてはならない。あらゆる苦痛をのりこして、走りつづけなければ勝つことができないのである。

一番健康な人のマラソンと、病人と、よく似ている、と放二は思った。マラソン選手は高熱のウワゴトの状態で走りつづけるのだ。苦痛に耐えて、生きぬき、走りつづけているのは病人だけではないのだ。人生が、そういうものなのである。凡人は途中でおりたり、落伍してしもう。まだしも病弱な自分は、その宿命として、おりては負けることをさとっている。そして、選ばれた優勝選手の心境を理解することもできるし、ややそれに似た日々を体験もしている。

少年の日、放二は病床で、そんなことを考えたことがあった。

二

この夏の暑気いらい、急速に衰えはじめた放二は、養父母の慈愛の手にみとられていたころとちがって、仕事もあったが、休息すべき部屋がなかった。

早めに戻って休息するのが何よりだったが、寝ていると、彼の部屋をたよりにしている女たちに暗い気持を植えてしもう。