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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《街はふるさと(まちはふるさと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 頁

青空文庫

たしかに彼は家のことには大そう興味をもっている。こんな家をたててみたいと考えて、自然に建物に目がひかれる。調度や書画のことも、自然考えているけれども、本当に買ってみたことがないせいか、好き嫌いまで、まだ漠然としている。世間では、こんな書画が値がいいそうだが、自分の好きというものが、まだ分らないのである。

なるほど商売人はうまいことを言う。家に凝ると、書画にこる。なるほど、うまい。こッちの気持、人間の気持をピタリと言い当てるのは、さすがに商売人である。こう感服したから、自分の至らないのをごまかして、彼はニコニコと考えてみせた。

「失礼ですが、こちらに御秘蔵の書画を、拝見させていただけましょうか」

「ナニ、君の方が風流人さ。この住居は借家。特に書画と名のつくものは、何一つ持たないのさ。君はどんなものが、お好きです」

「ぼくはこの、まだ若僧で、観賞力もないものですから、閑静な隠居家がすきですが、又、華やかな色彩、調度が好きなんです。サビとか、渋いということが分らぬわけではありませんが、どうしても華やかなものに気をひかれる。それで調和いたしません。この矛盾、これは悪いことでしょうか」