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ぐとくしんらん
西田幾多郎随筆集
西田 幾多郎
線上閱讀西田 幾多郎《西田幾多郎随筆集(ぐとくしんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,908 字 · 14 頁
君と余と相遇うて亡児の事を話さなかったのは、互にその事を忘れていたのではない、また堪え難き悲哀を更に思い起して、苦悶を新にするに忍びなかったのでもない。誠というものは言語に表わし得べきものでない、言語に表し得べきものは凡て浅薄である、虚偽である、至誠は相見て相言う能わざる所に存するのである。我らの相対して相言う能わざりし所に、言語はおろか、涙にも現わすことのできない深き同情の流が心の底から底へと通うていたのである。
余も我子を亡くした時に深き悲哀の念に堪えなかった、特にこの悲が年と共に消えゆくかと思えば、いかにもあさましく、せめて後の思出にもと、死にし子の面影を書き残した、しかして直にこれを東圃君に送って一言を求めた。当時真に余の心を知ってくれる人は、君の外にないと思うたのである。しかるに何ぞ図らん、君は余よりも前に、同じ境遇に会うて、同じ事を企てられたのである。余は別れに臨んで君の送られたその児の終焉記を行李の底に収めて帰った。一夜眠られぬままに取り出して詳かに読んだ、読み終って、人心の誠はかくまでも同じきものかとつくづく感じた。誰か人心に定法なしという、同じ盤上に、同じ球を、同じ方向に突けば、同一の行路をたどるごとくに、余の心は君の心の如くに動いたのである。