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おやばかにゅうどうき

親馬鹿入堂記

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《親馬鹿入堂記(おやばかにゅうどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,182 字 · 24 頁

青空文庫

昭和十二、三年頃だから中日事変が勃起したばかりの頃である。

私は生活の虚無感に陶酔しながら、連日酒を呷り、流連荒亡の夢を追って時の過ぎるのを忘れるような暮し方をしていた。

そのとき、私が自ら進んで、『親馬鹿の記』を書くような気持になったのは、子供がようやく物ごころづき、長じて小学校に入学するに及んで、これは冗談ではないぞ、という気持に唆しかけられたことが動機を成している。その頃私の近所に、私よりもひと廻り下の文学青年で、若いくせに早くから二人も子供を産んだ男がいて、よく街の銭湯で会うと、やっと二つか三つになった赤ん坊を流し場にならべ、楽しそうに鼻唄をうたいながら、格のついた親爺らしい落ちつきを示して、赤ん坊の身体に石鹸をつけ、タオルで、ごしごしこすっている。

これは恐るべき度胸だと、感嘆したことを今でもおぼえているが、二十年を経た今となると私自身が、まったく、それと同じ境地に落ちつこうとしているのだ。まったく十余年の歳月は、うかうかと夢のごとくに過ぎていった。紅唇いずれの日にか恋愛のために濡るるべき、――と冗談口をたたいた娘は早くも二十一歳になっていた。