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ちゅうもんちょう
註文帳
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《註文帳(ちゅうもんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,770 字 · 67 頁
」
「どういたしまして、」
「少しも御遠慮には及ばぬよ。」
「いえ、先方へでございます、旦那にじゃあございません。」
「そうか、いや意気地の無い奴だ。」と腹蔵の無い高笑。少禿天窓てらてらと、色づきの好い顔容、年配は五十五六、結城の襲衣に八反の平絎、棒縞の綿入半纏をぞろりと羽織って、白縮緬の襟巻をした、この旦那と呼ばれたのは、二上屋藤三郎という遊女屋の亭主で、廓内の名望家、当時見番の取締を勤めているのが、今向の路地の奥からぶらぶらと出たのであった。
界隈の者が呼んで紅梅屋敷という、二上屋の寮は、新築して実にその路地の突当、通の長屋並の屋敷越に遠くちらちらとある紅は、早や咲初めた莟である。
捨吉は更めて、腰を屈めて揉手をし、
「旦那御一所に。」
「おお、これからの、」
という処へ、萌黄裏の紺看板に二の字を抜いた、切立の半被、そればかりは威勢が可いが、かれこれ七十にもなろうという、十筋右衛門が向顱巻。
今一人、唐縮緬の帯をお太鼓に結んで、人柄な高島田、風呂敷包を小脇に抱えて、後前に寮の方から路地口へ。
捨吉はこれを見て、
「や、爺さん、こりゃ姉さん、」
「ああ、今日はちっとの、内証に芝居者のお客があっての、実は寮の方で一杯と思って、下拵に来てみると、困るじゃあねえか、お前。