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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
線上閱讀萩原 朔太郎《詩の原理(しのげんり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 頁
故に彼等の情象する世界を透して、吾人は或る霊魂の欲情している、情熱の高い抒情詩を聴くことができるのである。これに反して精神のない低劣の俳句は、詩情が機智的の趣味性に止まっているため、観照に於ける描写的手法のみが感じられ、真の強い詩的情熱を感じさせることがない。俳句が「感情の意味」で読まれずして、機智的なる「知性の意味」で読まれるのは、かかる低劣なる作品のためである。真の精神を有する俳句は、知性の頭脳に響かないで、直ちに心情に触れて来ねばならない筈だ。
故に芭蕉や蕪村やの、真の精神を有する俳句は、常に文字通りの「抒情詩」として感じられる。そこには常に、何かの訴えているものがあり、哀切しているものがあり、欲情しているものがいる。そしてこの一つのものこそ、彼等の生活に於けるイデヤであり、真の意味の「主観」である。されば俳句を客観的という意味は、全く詩趣の特色についてのみ見た意味であり、本質上には何等関しないことである。本質上には、俳句も他の一般の詩と同じく、純粋に主観的のものであり、したがってまた感情的のものである。かの俳人が枯淡を尊ぶのは、趣味性の上の薫育であって、詩的精神の涸燥を意味しないのは勿論である。