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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
線上閱讀萩原 朔太郎《詩の原理(しのげんり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 頁
かく個人的の立場で考えれば、各々の人の思惟することは、各々について皆ちがっている。故に何が「詩的なもの」であり、何が「散文的なもの」であるかは、一も明白な判定を下し得ない。畢竟各々の人の環境や主観によって、一々その見るところを別々にし、したがって詩の対象が異ってくる。そしてかくの如くば、吾人は遂に絶望する外ないであろう。けれども認識の対象は、何物が詩的であるかと言うのでなくして、詩的精神そのものの本体が、いかなる性質であるかという一事にかかっている。換言すれば問題は、山の景色が詩的であるか、海の景色が詩的であるかという、その対象の判別ではなく、こうした一般のものについて、吾人の心に感じられる「詩」の本質が、いかなる本有性のものであるかに存するのである。
そこで吾人は、今述べたあらゆる一般の場合について、個々に共通する本質点を探してみよう。もちろんこの場合の思索に於ては、一切詩の対象について見ないで、ただそれを心に感ずるところの、人の心意のみを観察する。故に始めに例題した多数者の通解も、後に説いた個人的な特殊な場合も、すべてこの場合には同じであって、無差別一様に考え得られる。