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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《貧しき人々の群(まずしきひとびとのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 頁
明治初年に、私共の祖父が自分の半生を捧げて、開墾したこの新開地は、諸国からの移住民で、一村を作られたのである。南の者も、北の者も新しく開けた土地という名に誘惑されて、幸福を夢想しながら、故国を去って集って来た。けれども、ここでも哀れな彼等は、思うような成功が出来ないばかりか、前よりも、ひどい苦労をしなければならなくなっても、そのときはもう年も取り、よそに移る勇気も失せて仕方なし町の小作の一生を終るのである。それ故彼等は昔も今も相変らず貧しい。
そればかりか近頃では、小一里離れているK町が、岩越線の分岐点となってから、めっきりすべての有様が異って来たので、この村も少からず影響を蒙(こうむ)った。そして、だんだんと農民の心に滲(し)み込んで来る、都会風の鋭い利害関係の念と彼等が子供の時分から持っている種々の性癖が混合して、毎日の生活がより遽(あわただ)しく、滞りがちになって来たのである。
村の状態は決して工合が好いとはいえなかった。長い間保って来た状態から、次の新しい状態に移ろうとする境の不調和が、全体を非常に貧しく落付かなくしているのである。
けれども祖父はもう十七八年前に亡くなって、ちょうど移住者もそろそろ村に落着いて来、生活が少しずつ、楽になったときの様子ほか見ていない。