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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《貧しき人々の群(まずしきひとびとのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 頁
新さんの眼からは、滝のような涙がこぼれた。押し切ったような苦しい啜り泣きの声が、静かな部屋に悲しく響き渡ったのである。
十七
都会から遠く逃れた、名も知られない一小村落に起るいろいろの事件を包含して、秋は去年と同様に、また百年前と同じように育って来た。
山並みや木々の葉に明かになって来た秋の気候と、まだどこやらに残っている夏の余力がともすれば衝突して、この二三日の天候は非常に悪かった。
広い空一面に雨雲が漂って、不愉快な湿気が南風の生暖かい吹き廻しと、垂れ下った雲の下で縺れ合っている。遮られがちな太陽(ひ)の光りは、層雲の鈍色(にびいろ)のかたまりに金色の縁取りをし、山並みを暗紫色に立木や家屋などの影を調(ととの)わない形にくっきりと、乾いた地面に印している。
山から斜に這う風が、パーッと砂煙を舞いのぼせると、実の重い作物が、ザワザワ……ザワ……と陰鬱な音を立ててうねり渡る。雲の絶間から眺められる暗藍色の空からは、折々細い稲妻が閃いて、奥深い所で低い雷がドドドドドドと轟いた。総ては物凄い様子で明けて暮れている。
その日は特(こと)に険しい天気で、夕方になってからは、恐ろしい風が吹き出したので、百姓達は皆非常な不安に攻められた。