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あかいらくだ

赤い駱駝

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《赤い駱駝(あかいらくだ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,820 字 · 24 頁

青空文庫

まだ部隊にいた時分、潜水艦勤務を五年もやったという古参の特務中尉がいて、それがおれたちにときどき話を聞かせてくれたが、そのなかでこんな話が今でも深く頭にのこっている。それは長時間海の底にもぐっていて、いよいよ浮上しようとする時の話なんだ。なにしろ潜水艦というふねは、水にもぐっている関係上、空気の補給がぜんぜん絶たれているだろう。空気はよごれ放題によごれ、吸ってもはいてもねとねとと息苦しいだけで、みんな顔には出さないけれども、死にかかった金魚のように、新らしい空気にかつえているわけさ。だから浮上ということになると、皆わくわくしてフタのあく一瞬を待っている。海水を押しわけて、ぐっと浮上する。フタがぱっと開かれると、潮の香をふくんだ新鮮な空気が、さあっと降るようにハッチから流れこんでくるのだ。その時の話なんだが。

「ぐっと吸いこんで、どんなにか美味いだろうと思うだろ。ところがそうじゃないんだ。吸いこんだとたんに、げっと嘔気がこみあげて、油汗が流れるぞ。そりゃ手荒くいやな気持だぜ。てんで咽喉が新しい空気をうけつけないんだ。一分間ぐらいそれが続く。やっと咽喉や肺が慣れて、それからほんとに、空気というやつは美味いなあ、と判ってくるんだ。