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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,146 字 · 40 頁

青空文庫

三

と母に云った。

「これでいい」と、父は母が立っていったあとで云った、「このまえのことがあるからどうかと心配だったが、これで私もひと安心だ、今日は盃のあとで、天野さんからいい話がある筈だ」

登は父の顔を見た。良庵は人の好い微笑をうかべていた。

三

それから着替えをし、客間で内祝言の盃をした。古い金屏風をまわし、緋の毛氈を敷いて、燭台を二基。登は熨斗目麻裃、まさをは白無垢に同じ打掛、髪は文金の高島田で、濃化粧をした顔は、人が違ったかと思われるほどおとなびてみえた。――良庵夫妻も、天野夫妻もむろん礼装であるが、盃台や銚子をはこんで来たのは、見馴れない婦人だった。

――仲人は出席しないのかな。

登はぼんやりそう思っただけであるが、まさをとの盃が作法どおりに終ると、盃台や銚子をはこんで来た婦人が、ずっと向うの襖際に両手を突いて、「おめでとうございます」と祝いの言葉を述べた。その声がふるえてい、両手を突き頭を垂れたまま、その婦人が啜り泣いているのを見て、登はさっと顔をひきしめた。

――ちぐさ、ちぐさだ。

彼は眼を洗われたような気持で、相手のようすを見た。彼女がひどく老けたことを、登は認めた。