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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,146 字 · 40 頁
別れを告げて、天野の家族より先に外へ出た登は、声に出してそう呟いた。曇った夜の気温は冷えていたが、昂奮している彼にはその寒さがこころよく、力のこもった大股で、登はいさましく歩いていった。
養生所へ帰るとすぐに、登は森半太夫の部屋を訪ねた。半太夫はまさをとの内祝言にはすぐ祝いを述べた。あのひとはいい妻になる、こちらから頼んでも貰うべき人だ、と半太夫は云った。しかし、養生所に残ることについては、むずかしそうだな、と首をかしげた。
「新出先生はもうきめているようだし」と半太夫は云った、「まもなく津川が来るだろうからね」
「津川って、――」登は半太夫を見た、「するとこのあいだ、ここでも人が要る、と云ったのは、そのことだったのか」
「まあそうだ、津川玄三はしようのないやつだが、保本がいなくなるとすれば、津川でもいないよりましだからな」
「おれは残る」と登は低い声で云った、「先生が出てゆけと云っても動かないつもりだ」
半太夫は唇の隅で微笑した。変ったな、と半太夫は思った。ここへ来た当時は、逃げだすことばかり考えていた。ふしぎはない、あたりまえの人間なら誰でもそう思うだろう。