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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,384 字 · 41 頁

青空文庫

と彼は云った、「――津川はなにをしたんだ」

「そんなこと云えませんわ」

「いいか、お杉さん」と彼は改まった調子で云った、「私は医者だし、新らしい医術をまなんで来た人間だ、詳しい症状がわかれば、赤髯とはべつな治療法があるかもしれない、話してみるだけでも、むだじゃあないと思わないか」

お杉も彼を見返した、「まじめにそう仰しゃるのね」

「私のことはよく知っている筈だ」

「酔ってさえいらっしゃらなければね」とお杉は云った、「ようございます、この次のときにすっかりお話し申しますわ」

「どうしていま話さないんだ」

登はお杉の手をつかもうとした。お杉はその手を避けて立ちあがり、くすっと忍び笑いをしながら云った。

「そういうことをなさるからよ」

「それとこれとはべつだ」

登はすばやく立ってお杉を抱いた。お杉はじっとしていた。登は片手をお杉の背、片手を肩にまわして抱き緊めた。

「おれが好きなんだろう」

「あなたは」とお杉が訊き返した。

「好きさ」と云いざま、登は自分の唇でつよくお杉の唇をふさいだ、「好きだよ」

お杉の躯から力がぬけ、柔らかく重たくなるのが感じられた。登は腰掛のほうへ引き戻そうとした。