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あかごうしくろうえもんのむすめ

赤格子九郎右衛門の娘

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《赤格子九郎右衛門の娘(あかごうしくろうえもんのむすめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,174 字 · 33 頁

青空文庫

「すこしどうも睡り過ぎるようだ。……毎晩お前の立ててくれるこの一杯の薄茶を飲むと、地獄の底へでも引き込まれるようににわかに深い睡眠に誘われ、そのまま昏々睡ったが最後、明けの光の射す迄はかつて眼を覚ましたことはない」

「まアお殿様、何を有仰ります」

お菊は柳眉をキリリと上げた。

「何か妾がお殿様へ、毒なものでも差し上げるような、その惨酷い仰せられよう。あんまりでござんすあんまりでござんす。……それほど疑がわしく覚し召さば一層お暇を下さいまし。きっと生きては居りませぬ。淵川へなりと身を投げて……」

「ああこれこれ何を申す。……何のお前を疑うものか。暇くれなどとはもっての他じゃ。手放し難いは老後の妾と、ちゃんと下世話にもあるくらい、お前に行かれてなるものか。……とは云えどうもこの薄茶が……」

「お厭ならお捨なさりませ」

お菊はツンと横を向いた。

「アッハハハ、また憤ったか。そう老人を虐めるものではない。せっかくお前の立てた薄茶、捨るなどとは勿体ない話。どれそれでは。いいお手前じゃ」

指で拭って前へ置き、その指を懐中の紙で拭いた。ともう睡気に襲われるのであった。

「プッ」