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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
線上閱讀海野 十三《赤耀館事件の真相(せきようかんじけんのしんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 頁
其の年は不思議な気象状態で、七月の半を過ぎても、夏らしい暑さは来ず、途上の行人はいつまでもネルやセルの重い単衣に肌をつつんで居りました。それは七月三十日のことです。嫂はいつになく機嫌がよく、朝からそわそわと衣裳を出して眺めたり帯上げをあれやこれやと選りわけたりしていましたが、気に入ったのが見付かったのか、着物を着換えると、行先も言わず、ただ東京まで行って来るからと百合子に言いのこした儘、外出いたしました。ところが嫂は、その夜遅くなっても帰って来る様子がなく、眠りやらぬ百合子は遂に次の日の暁が、東の窓から明るく差し込んで来るのを迎えました。今日こそおひる頃までには帰って来るであろうと、眠さも忘れ唯不安な気持一杯で待ち尽しましたが、これも亦空しい期待に終りました。それから夕陽が赫々と赤耀館の西側の壁体に照り映えるころを迎えましたが、窓から街道を見下していても、鯨ヶ丘を指して帰って来る嫂の姿は発見されなかったのです。やがて恐怖に充ちた夜が来ました。百合子はお手伝いさん達を駆りあつめて自分の室に共に寝をとらせましたが、どうしても寝つかれません。ちょろちょろと眠ると何だか真黒な魔物に乗りかかられた夢を見て呻されたり、その毎にべとべとになった寝衣を着換えたりいたしました。