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ろじょう

路上

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《路上(ろじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,539 字 · 87 頁

青空文庫

「おや、あれは君、辰子さんに似ているじゃないか。」と、意外な方面へ談柄を落した。

「そうかね。僕はそうとも思わないが。」

俊助はこう答えながら、明かに嘘をついていると云う自覚があった。それは勿論彼にとって、面白くない自覚には相違なかった。が、同時にまた、小さな冒険をしているような愉快が潜んでいたのも事実だった。

「似ている。似ている。もう少し辰子さんが肥っていりゃ、あれにそっくりだ。」

野村は近眼鏡の下からしばらくレダを仰いでいた後で、今度はその眼を桜草の鉢へやると、腹の底から大きな息をついて、

「どうだ。年来の好誼に免じて、一つ案内役を引き受けてくれないか。僕はもう君が行ってくれるものと思って、その旨を初子さんまで手紙で通知してしまったんだが。」

俊助の舌の先には、「そりゃ君の勝手じゃないか」と云う言葉があった。が、その言葉がまだ口の外へ出ない内に、彼の頭の中へは刹那の間、伏目になった辰子の姿が鮮かに浮び上って来た。と、ほとんどそれが相手に通じたかのごとく、野村は安楽椅子の肘を叩きながら、

「初子さん一人なら、そりゃ君の辟易するのも無理はないが、辰子さんも多分――いや、きっと一しょに行くって云っていたから、その辺の心配はいらないんだがね。