輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ろじょう

路上

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《路上(ろじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,539 字 · 87 頁

青空文庫

俊助は当然なるべきこの表情を妙にもの珍しく感じながら、「やあ」と云う挨拶を眼で送った。と、大井も黒木綿の紋附の肩越に、顎でちょいと会釈をしたが、それなりまた向うを向いて、隣にいた制服の学生と、何か話をし始めたらしかった。俊助は急に昨夜の一件を確かめたい気が強くなって来た。が、そのためにわざわざ席を離れるのは、面倒でもあるし、莫迦莫迦しくもあった。そこで万年筆へインクを吸わせながら、いささか腰を擡げ兼ねていると、哲学概論を担当している、有名なL教授が、黒い鞄を小脇に抱えて、のそのそ外からはいって来てしまった。

L教授は哲学者と云うよりも、むしろ実業家らしい風采を備えていた。それがその日のように、流行の茶の背広を一着して、金の指環をはめた手を動かしながら、鞄の中の草稿を取り出したりなどしていると、殊に講壇よりは事務机の後に立たせて見たいような心もちがした。が、講義は教授の風采とは没交渉に、その面倒なカント哲学の範疇の議論から始められた。俊助は専門の英文学の講義よりも、反って哲学や美学の講義に忠実な学生だったから、ざっと二時間ばかりの間、熱心に万年筆を動かして、手際よくノオトを取って行った。