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おどるちへいせん
踊る地平線(上)
谷 譲次
線上閱讀谷 譲次《踊る地平線(上)(おどるちへいせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 168,926 字 · 332 頁
いいかえれば、それほどメイフェアの石と煉瓦は、雄弁に、じつに雄弁に倫敦を語っているのだ。この、十八世紀初期の建築が低い表階段を並べているメイフェアなる地点は、いろいろな装飾で取り巻かれた中心に小さな宝石が象眼してあるように、地理的にいえばごくせまい。南はピカデリイ、北はオックスフォウド街、東はボンド街、西はパアク・レインにかこまれた一廓に過ぎないが、小さな横町が無数に通っているので、生粋の倫敦人でもうっかりすると迷児になるくらいだ。大富豪の邸宅――といったところで驚くほど小さな――に混って、ばかに内部の暗い本屋や毛織物店が、時代と場処を間違えたように二、三軒かたまっていたりして、ここの街上で見かける紳士はどこまでもふるい英吉利国の紳士であり、角の太陽酒場から口を拭きながら出てくる御者と執事と門番は、そのむかしワイルドのむらさきの円外套をわらった御者と執事と門番に完全に――服装以外は――おなじである。しずかに過去を歩こうと思えばこのメイフェアに限る。近代化、もしくは亜米利加化しつつあるいまのロンドンに、いぎりすらしく頑固に、そして忠実に倫敦を保っているのはメイフェアと霧だけだからだ。