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れんかんき

連環記

幸田 露伴

線上閱讀幸田 露伴《連環記(れんかんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,281 字 · 95 頁

青空文庫

これほどの赤染右衛門に出て来られて、有り余る才を向う側に用立てられて、しかも正しい道理のある方に立って物を云われては、定基たるものも敵う筈は無い、差当りだけでも、如何にも御もっともと、降伏せざるを得ないところであった。

ところが然様はいかなかった。定基に取っては力寿のかわゆさが骨身に徹していたのである。イヤ、骨身に徹するどころではない、魂魄なども疾くに飛出して終って、力寿の懐中の奥深くに潜り込んで居たのである。妻は既に妻ではないのであった、袖の上の飛花、脚の下の落葉ほどにも無いものであったのである。妻に深刻な眼で恨まれたこともあったろうが、それは籬の外の蛍ぐらいにしか見えなかったであろう。母に慈愛のまなざしで諭されたことも有ったろうが、それも勿体ないが雲辺の禽の影、暫時のほどしか心には留まらなかったのであったろう。如何に歌人でも才女でも、常識の円満に発達した、中々しっかり者の赤染右衛門でもが、高が従兄弟の妻である。そんなものが兎や角言ったとて、定基の耳には頭から入らなかったのであろう。別に抗弁するのでも無ければ、駁撃するというでも無く、樹間の蝉声、聴き来って意に入るもの無し、という調子にあしらって終った。