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どうとくのかんねん
道徳の観念
戸坂 潤
線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁
「モラル」という流行観念の実際のニュアンスは、もっと形式的な処にあり、又その形式そのものをその独自の内容として居坐らせたものに他ならない。階級闘争のモラルは、夫が階級社会の実践的活動分子たる人間に満足を与える限り、初めてモラルとなる。だからモラルは、その階級闘争の情熱や憎悪や意欲という内容にあるのではなくて、之が満足に帰するというその形式にあるのであり、そしてこの形式が満足という一般的な内容に直ったものがモラルの内容だ、ということになる。でモラルはそれ自身に固有な形式的内容を有つ。夫が一般に満足ということで、やがてよく云われる所謂幸福というものが夫だ。
モラルの内容(実はそれに固有な一般的内容)を幸福に求める文学者は、無論極めて多い。否殆んど総ての文学者はモラルの追求の名に於て幸福の探究を企てる。例えばA・ジードの自叙伝『一粒の麦もし死なずば』や『文学とモラル』などはこの意図をよく物語っているだろう。K・ヒルティの『幸福論』(岩波文庫訳)によると、「哲学的見地から或いは勝手に反対することも出来ようが、しかし人が、意識に目覚めた最初の時からその終りに至るまで、最も熱心に追求してやまないものは、実にただ幸福の感情である」