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どうとくのかんねん
道徳の観念
戸坂 潤
線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁
すでにアリストテレスでは「倫理学」と呼ばれる書物は二つまである(道徳論と題するものも一二あるが)。このようにこの名称自身は、古い歴史を有っているのは断わるまでもない。併しそれであるからと云って、その内容をすぐ様近代の倫理学の発端と見做すことは誤りであるし、又之が学問の世界に於て占めた位置関係から云って今日の所謂倫理学と同じだったとも云えない。第一そこで問題になる善(To Agathon)の観念にしても、近代倫理学で問題になっている所謂道徳や倫理の善悪の善のことではないので、それより活々として、真理で美しくて有益で怡ばしいものを意味している。従ってこの倫理の根本観念が占める理論上の地位は、遙かに今日のものよりも実質的な重大性と含蓄とを有っていたのだが、併しそれだけに却って、倫理学自身の独立性はあまり著しくは現われ得なかったわけだ。プラトンの国家論は寧ろ道徳論にぞくするユートピアだろう。
現にアリストテレスでは、倫理学(エティカ)の位置は経済学(オイコノミカ――之は純粋にアリストテレス自身のものではないらしいが)と政治学(ポリティカ)とに先立つ処に意味を有っている。