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どうとくのかんねん

道徳の観念

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁

青空文庫

すでに述べたように、道徳は社会秩序の分泌物のようなもので、従ってその反映である道徳意識乃至倫理観念は、社会秩序の上部構造的な表現に他ならないが、社会秩序が比較的安定を得ている場合には、その道徳乃至道徳意識は、自分の内に何等の抵抗も矛盾も感じないので、倫理思想は殊更自覚される縁もなければその必要もない。倫理が問題として自覚され、倫理学などが発生するのは、一般に社会変動と夫に基く思想的動揺とに照応してのことなのだ。近代ブルジョア倫理学の発生も亦そうなのである。

前にも云ったが、近代倫理学はイギリスのブルジョア倫理学として発生し又発展した。その直接の源をなすものはトーマス・ホッブズであった。ホッブズに先立つエリザベス時代は、イングランドがヨーロッパに於ける制海権を握り植民地貿易企業には莫大の利潤をあげ得た、商業資本主義の大規模な発達時代であった。当時の海外貿易会社は一〇〇割の配当をなし得たとさえ云われている。尤もこの点ルイ十四世治下のフランスでも大した差はなかったのだが、併しイングランドに於ける特色ある一事情は、新興ブルジョアジーの早い発達が容易に地主貴族の利害と結合出来たという点に存する。