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どうひょう

道標

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁

青空文庫

三

佐々のものたちは、その僅の間をいそいでホールへすべりこんだ。みんなについてエレヴェーターのところへ行こうとしていた伸子は、門番の住居の小窓から、

「マドモアゼール」

とよびとめられた。

玄関に向ってあいている門番の小窓には、背後から橙色のスタンドの光を浴びて、カラーなしのシャツ姿の爺さんが首を出していた。

「ヴォア・ラ! あなたへ、電報」

細長くたたんである紙をさし出した。伸子は、不安なような、全く不安のないような変な気分で、それをうけとった。

「ありがとう」

心づけを爺さんの手のひらにのせて、伸子はうちのものの佇んでいるエレヴェーターのところへ行った。

「――おや、電報かい?」

多計代が、神経質にまばたきした。

「わたしのところへ来たのよ」

「吉見さんだろう」

素子はモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ着いたとき、ロンドンのホテルあてに伸子に電報をよこしたし、伸子たちがペレールへかえってすぐのときも、電報をよこした。ぶこ、かわりないか、やど知らせ、と、ローマ字で書いて。手紙の往復の間をまちきれない素子のこころもちが、その電文に溢れていた。いまも、伸子は、七分どおりモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)からだろうときめて、おどろかずに電報をうけとったのであった。