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どうひょう

道標

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁

青空文庫

はじめての子を、須美子は日曜日に生んだのだそうだった。

「でも、お産の方がよろしいわ。日曜日でもお産だけは格別で、かえってみなさん親切にたすけて下さいますから……」

無装飾な鈍い壁の色をむきだしたその室のなかで、大きい静かな眼の上まで前髪のきり下げてあるおかっぱと、東洋風に小さいたてカラーのついた黒い服をすらりとつけている須美子の姿は、独特に美しく、また、いつみても伸子の心に伝わるある淋しみがあるのだった。

「磯崎君は?」

素子がきいた。

「今晩はお友達の会だって、出かけて居ります。めずらしいことですわ」

「あなた、行かないんですか」

「――子供がおりますから……」

そう云ったあとで、須美子は、ちょっと顔をうつむけた。彼女のうなじを、黄昏の光がかすめた。カーテンのない窓が、こみあったデュトの通の内庭に面してあいている。

「ここのマダムにおたのみになれないの?」

良人の留守、ひとりでいなければならない若い須美子が伸子に哀れに思えた。

「そのくらい、駄目?」

「たのめば、それはして下さいますけれど、……やっぱり、お気の毒で」

素子は須美子の父の門下生で、須美子が幼い女の児だった時分からのなじみだから、パリで、磯崎のところと伸子たちとは、もっともっと内輪のつき合いがはじまりそうだった。